章  背徳



第九週 「浮遊」

1月4日(月) 曇り

なんだか心がフワフワします。落ち着かなくて言いようのない不安感に襲われます。
外をぶらついてみても、何故か誰かに見られてる様な気がしてなりません。
僕は何も悪いことをしてないはずなのに。この罪悪感は何なんでしょう。
何かしなくちゃいけない気もするけど、何をしていいのか分からない。
この感覚、とても不愉快です。


1月5日(火) 曇り

今日も気持ちが落ち着きません。早紀に会えば気が紛れるかと思ったので病院に行ってみました。
早紀は未だに壊れたままです。それでも早紀と一緒にいるだけで落ち着きます。
早紀の服を脱がせて自慰をしました。爽快感に包まれてとても良い気分です。
なのに帰り際、とてつもない虚しさを感じました。自分がどうしようもない駄目人間に思えてしまいます。
何故なんでしょう。


1月6日(水) 曇り

やる気のない日々が続きます。気分転換にフラフラと外を出歩いてみました。
正月映画でも見ようかと映画館に行くと、荒木さんとその友人の渡部さんを見かけました。
目が合ったんですが彼女達は無関心といった感じで何処かに行ってしまいました。
僕も無視していこうかと思ったけど、何故か彼女達から目を離せませんでした。
変な違和感を感じます。


1月7日(木) 晴れ

昨日の違和感が何だったのか分かりました。簡単な心境の変化です。
荒木さん達を見かけた後、僕は一昨日まで感じてた不安感が薄れていたのに気づいたんです。
今、僕は前に比べてかなり落ち着いてます。むしろ安堵感さえ感じてます。
その理由はなんとなく分かりました。明日からまた学校が始まります。
行ってみようかと思ってます。


1月8日(金) 雪

久々に学校に行きました。緊張気味に教室に入ったんですが変わった事は何も有りませんでした。
みんな僕を見ても特別な反応は無く、「なんだ来たのか」みたいな感じばかりでした。
杉崎先生と目が合った時もちょっと嫌な顔をされただけで特に何も言われなかったです。
帰る時、僕の下駄箱に「虫うぜぇ。学校来んな。」と書いた紙が入ってました。
誰が書いたんでしょう。


1月9日(土) 曇り

イジメが再発しそうです。でも僕は以前の僕と違う。今度は耐えられるはずです。
奥田はもう居ない。それに僕には切り札が有る。どうしても我慢出来なくなったらアレを使えばいい。
数日前まで感じてた不安感は今ではもうほとんど感じません。学校に行ったおかけです。
僕にしか出来ない事が存在する、ということがこんなに清々しいものだとは思いませんでした。
素晴らしいです。


1月10日(日) 曇り

早紀に会いに行きました。白い顔をして眠ったままの早紀は、一体どんな夢を見ているんでしょうか。
早紀は夢の世界へ行ってしまいましたが僕は現実を生きなければなりません。
イジメられる。いや、むしろいじめて欲しい。僕に屈辱を与えて欲しい。耐えられないくらいに。
僕が惨めな思いをすればするほど、あとの楽しみが大きくなっていきます。
早く学校に行きたいです。


第十週 「煮沸」

1月11日(月) 晴れ

学校に行くと、机の配置がおかしくなってました。皆の机は僕の机を避けるように離れてます。
授業中、ヒソヒソと話し声が聞こえます。「なんか虫の奴臭くない?」「臭いよね。机離して良かったね。」
渡部さんと荒木さんでした。渡部さんは周りの人たちにも「やっぱ臭うよね。」とか言ってます。
僕は直感しました。この前、下駄箱に紙を入れたのは渡部さんだ。渡部さんが僕をいじめる。
女の子にいじめられるなんて。


1月12日(火) 曇り

女の子のイジメは陰湿です。体育の時間、教室に戻ってきたら僕の鞄が消えてました。
捜してると渡部さんが「何か捜しモノ?」と白々しく聞いてきます。「鞄、捜してる。」と答えました。
渡部さんが言いました。「それならさっきトイレで見たわよ。女子の方でね。」と。
僕は女子トイレに駆け込みました。後ろで「変態!」「痴漢!」とか聞こえるけど気にしてられません。
ご丁寧に個室一つ一つそれぞれに鞄の中身が落ちてました。もちろん全て便器の中です。
水道で鞄を洗いましたが臭いだけは取れませんでした。お気に入りの筆箱も、ノートも、まだ臭います。
僕の机はますます孤立しました。


1月13日(水) 曇り

ホームルームの時間、渡部さんが「クラス委員から話があるそうです。」と言いました。
それに反応して荒木さんが「昨日女子トイレに入った男子がいるそうです。」と言います。
皆が僕を睨み付けました。「虫!アンタでしょ!」と渡部さんが叫んでます。
酷い。誰のせいで女子トイレに入るハメになったと思ってるんだ。自分で追いつめたくせに。
僕は黙ってうつむいてました。なんか目が暖かいと思ったら、涙が溢れてました。
周りの罵声が遠く感じます。


1月14日(木) 曇り

僕の弁当に黄色い液体がかかってました。変な臭いがします。よく見たら小便でした。
渡部さんの仕業だと思います。ということは、渡部さんの小便?
僕はご飯をむさぼりました。おいしい。股間に血が集まっていくのが分かります。
全てたいらげると、横から渡部さんが囁いてきました。「どう?野良犬のオシッコふりかけは。」
トイレで全部吐きました。


1月15日(金) 雪

僕はお腹で虫を飼っています。こいつは僕の負の感情を喰って育っていく。
虫が育つたびに、僕は快感を得ます。そろそろ育ちきるんじゃないでしょうか。
そうなったら僕自身も喰われるかもしれません。でも僕はそれを望んでる。
喰われると言ってもそんな派手なことにはならないはずです。ただ「やれ。」と命令されるだけ。
その日は近い。


1月16日(土) 曇り

僕の上履きに何か入ってました。知らずに履いた為、中のモノはぐちゃりと音をたてて潰れました。
渡部さんと荒木さんがやってきて何かを探してます。「私達のハムちゃん知らない?」と聞いてきました。
僕が「ハムちゃんて何?」と聞き返すと、渡部さんがニヤリと笑って荒木さんをつつきました。
荒木さんが「生まれたてのハムスター。最近飼い始めたの。」と説明してくれました。
足の裏から嫌な感触が全身を覆います。ゆっくり上履きを脱ぐと、そこには、血と、肉の塊が。
それから先は良く覚えてません。あの二人に何か言われた気もするけど、頭の中は真っ白でした。
お腹が疼きます。


1月17日(日) 晴れ

僕の中の虫が「やれ。」と命令してきました。ヤツはもう完全に僕を喰ってしまったようです。
僕は準備を整え、明日に備えました。明日から世界が変わります。待ちに待ったお仕置きタイムです。
今までのイジメを思い出すと、震えるほど楽しくなってきます。準備は万端です。
士気を高めに早紀に会いに行きました。まだ寝たきり状態ですが心の中では応援してくれてるでしょう。
いよいよです。


第十一週 「逆転」

1月18日(月) 曇り

僕の下駄箱に「ハムちゃんの墓」と書いた紙が貼ってありました。かわいらしくレタリングされてます。
上履きの中には腐りかけたハムちゃんの残骸が入ってましたが、手でつかんでゴミ箱に捨てました。
教室に入ると都合良く荒木さんは独りで座ってました。僕は彼女の前に立ち、アレをちらつかせました。
荒木さんは目を丸くして僕を見上げました。かすれた声で「なんでそれを・・・・。」と呟いてます。
僕が耳元で「奥田のようになりたい?」と囁いてやると、青ざめた顔でプルプル震えてました。
どうしてやろうか。


1月19日(火) 晴れ

体育の時間、教室に戻ってきた荒木さんが何か捜してました。
焦ってる様子なので「何か捜しモノ?」と聞くと、荒木さんは「鞄が無いの・・・・。」と答えました。
僕は親切に捜しモノの場所を教えてあげました。「それならさっきトイレで見たよ。男子の方で。」
荒木さんは顔を真っ赤にしながら男子トイレに駆け込んでました。後ろで男子があっけにとられてます。
水道で鞄を洗ってましたが臭いだけは取れなかったようです。筆箱も、ノートも、僕の席まで臭ってます。
爽快です。


1月20日(水) 曇り

昼休み、荒木さんがお弁当を食べようとすると、そこには白いドロドロした液体がかかってました。
荒木さんはびっくりして僕を見ました。僕はアレをちらつかせて「ちゃんと食べなよ。」と言いました。
食べてる。無理矢理口に押し込んで。その液体が何なのか知らないわけがないのに。凄い。
全部食べ終わったと思ったら、その場で戻してました。机が嘔吐物にまみれてます。
クスンクスン泣きながら雑巾で机を拭いてる荒木さんの姿は、とても健気に見えました。
眩しいです。


1月21日(木) 晴れ

渡部さんが荒木さんの事を心配してました。僕は横で会話を盗み聞きしてました。
「最近なんか変だよ。また誰かに何かされた?」「別に。平気だよ。」「でも・・・・・・虫!何聞いてるの!」
気づかれた。「まさかあんたが・・・・・・。」「違うよ!岩本君は関係ない!」と荒木さん。
岩本君。久々にその名を聞いた気がずる。いや、そう呼ばれたのは初めてかもしれない。素晴らしい。
まだ何か言いたげな渡部さんを、荒木さんは力無い笑顔で「私は大丈夫だから。」となだめてました。
友情って素敵です。


1月22日(金) 曇り

放課後の教室。荒木さんが倒れてます。僕の足の下に。他には誰もいません。
「もう許して・・・・。」とかすれた声で呟いてます。制服には僕の足跡が何カ所かついてます。
許すもんか。お前は渡部さんとつるんで僕に何をしてきたんだ。僕をいじめたじゃないか。
「よくも、よくもいじめたな!お、お、お仕置きしてやる!」自分でも信じられないほど僕は叫んでました。
これまでのいじめを思い出してしまい、僕は泣いてました。荒木さんも泣いてました。涙が止まりません。
以前僕は荒木さんに蹴られた。今は僕が荒木さんを蹴ってる。でも何故か満足感は得られない。
何故。まだ足りないんでしょうか。僕と同じ目にあわせないといけないんだ。同じ目に、あわせてやる。
僕はすすり泣く荒木さんを後目に教室を出ました。家に帰り、明日の為の用意をしました。
見てろ。


1月23日(土) 晴れ

朝、荒木さんが登校すると、学校中に写真が貼られてました。正式にはデジカメの画像を印刷したもの。
奥田に犯される荒木さんの画像です。 僕がそれを手に入れたのは偶然でした。
杉崎先生には本当に感謝してます。コレを手に入れたおかげで荒木さんを追い込む事が出来たから。
ああ、荒木さんが泣いてる。耳を真っ赤にして写真を一つ一つはがして回ってます。いじらしい。
学校に来なければいい、なんてのは素人の考えです。行かなきゃもっといじめられる。僕もそうでした。
これで荒木さんは僕と同じ立場になれたわけです。虫だった僕にも仲間が出来た。
もう独りじゃない。


1月24日(日) 雨

僕の中にいる虫の存在を感じなくなりました。消えてしまったのでしょうか。それとも僕と同化したのか。
なんとなく早紀に会いに行きました。荒木さんのことを報告しても、返事は返ってきませんでした。
早紀と結ばれたとき、僕は何かとてもいけない事をしてるように感じたのを覚えてます。
その時は僕の中の虫がその気持ちを食べてしまいました。だから罪悪感は感じてません。
今回、荒木さんにしたことも本当はとても非道いことかもしれない。でもそんな意識はありません。
やっぱり僕自身が虫になってしまったんだ。


第一二週 「断罪」

1月25日(月) 雨

荒木さんが学校に来てない。おかしい。どんなにいじめられても学校には来るはずなのに。
僕は急に不安になってきました。何かとんでもないことになりそうな予感がします。
気がつくと、渡部さんが僕の机の前に立ってました。見下した様な目で僕を見てます。
「荒ちゃんから聞いたよ。」・・・・・・・何を聞いたんだ。「アンタがやったんだってね。」・・・・・・・だから何を。
「親に知られたんだって。」・・・・・・・知らない!僕は何も知らない!僕は何もやってない!
渡部さんはそれきり何処かへ行ってしまいました。残された僕は独り怯えてました。
大丈夫。僕には最期の手が残ってる。イザとなったらあの事を喋ってしまえばいいんだ。
荒木さんのもう一つの秘密。あの事に比べたら僕のしたことなんて大したことじゃない。
絶対に大丈夫。


1月26日(火) 晴れ

今日も荒木さんは来ない。どんどん不安が大きくなっていきます。
また渡部さんが僕の所へやってきました。今度は何を言いに来たんでしょうか。
「荒ちゃんには反対されたんだけど、私はやるつもり。」・・・・・・・・何を。何をするつもりなんだ。
「虫、アンタもう終わりよ。」・・・・・・どうゆう意味だ。なんで僕が終わりになっちゃうんだ。
それだけ言い残して行ってしまいました。何が起こるのか、なんとなく予想がついてしまいました。
大丈夫大丈夫大丈夫。でも不安が消えない。大丈夫だって分かってるのに。押しつぶされそうだ。
早紀、助けて。


1月27日(水) 曇り

予想が当たった。今家の前に来た車は間違いなく警察だ。呼び鈴が聞こえる。
僕は法に触れるようなことは何もしてない。あの事だって全部喋ってしまえば僕の罪にはならない。
親が玄関で応対してる声が聞こえてくる。ああ、今確かに「警察の者ですが。」と聞こえた。
大丈夫。たぶん大丈夫。僕はいじめられてたんだ。仕返しをして何が悪い。写真くらいで騒ぐなんて。
待てよ。その事じゃないかもしれない。・・・・・そうだ。やっぱりあの事だ!それなら警察が動くのも当然だ!
渡部さんはあの写真を警察に持ち込んだんだ!それで警察はあの事を確信して僕の所に!
なんだ。なら安心じゃないか。渡部さんの思惑通りにはならない。僕は僕は絶対に大丈夫なんだ!
親が階段を上がってくる。僕の名を呼んで。そんなにあせらなくても僕は逃げないよ。
行ってやる。そして全てを喋ってやる。そうすれば間違いなくあの娘は破滅だ。けけけけけけけけけけけ。
知らないよ!人が破滅しようが僕の知った事じゃない!僕が大丈夫ならいいんだよ!
僕は大丈夫!へへへ。大丈夫!良い響きだ。えへへへへへへへへへへへへ。大丈夫大丈夫大丈夫!
僕僕僕僕は僕は僕は僕は僕は大丈夫大丈夫僕は僕は大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫
 僕は
          大
                      丈
                                   夫


1月28日(木) 曇り

僕にとって荒木さんは使者でした。恨みもありますが、それ以上に彼女のしてくれた事には感謝してます。
荒木さんは僕の願いを叶えてくれた。だからあの事も今まで黙ってたんです。言う必要が無いから。
でも今は違う。彼女は僕をいじめた。それに黙ってたら僕の身が危うくなる。
昨日僕は警察に連れて行かれました。そして僕の証言を元に、今日、荒木さんが逮捕されました。
殺人罪です。被害者は奥田。あの日、荒木さんは僕の目の前で奥田を殺してくれた。
僕が愛用してた黒いマフラー。荒木さんは同じモノとを手に入れ、僕に変装して奥田を殺したんです。
僕は元々小柄なため、マフラーで顔を覆って学ランを着込んだ荒木さんは本当に僕そっくりの容貌でした。
彼女は奥田殺しの罪を僕に着せようとしていた。でも誰も見てなかった。僕以外。
あの時、僕は何故荒木さんが奥田を殺したのか分かりませんでした。今となったら動機は明白ですが。
デジカメの画像の日付は11月16日。あの日の放課後、荒木さんは奥田に犯された。
警察の話では、荒木さんが犯人だとは有る程度目星がついてたけど、僕にも目を付けてたそうです。
なぜ逮捕までこんな時間がかかったのかは明日書きます。ちょっと複雑な事になってます。
ただ、はっきりしてる事が1つだけ。やっぱり渡部さんは警察にあの写真を持ち込んでいた。
僕が荒木さんを脅迫してた事を立証したかったらしいんですが、逆に荒木さんを破滅に導いてしまった。
嘆かわしいです。


1月29日(金) 晴れ

奥田が殺された後、警察の動きの話をまとめるとこうなります。
@奥田の友人達の証言で荒木さんが犯されていたことが発覚。表向きは捜査打ち切りに。
A強姦について詳しく調査しようとすると皆口を閉ざす。
B荒木さんの状況証拠が固まるも動機とみられる強姦事実がはっきりしない。
Cさらに調査に時間をつぎ込む。そうしてるうちに僕が犯人だとタレ込みが。これが約1ヶ月前だそうです。
D僕の調査を開始。しばらく調べても僕に犯行を行った様子は見られない。
E渡部さんが僕を訴えるために荒木さんの強姦写真を持ち込む。便乗して僕に奥田事件の事情聴取。
F僕が全て証言。荒木さんが奥田を突き落とす瞬間を見ていたことが決め手となって荒木さん逮捕。
警察が捜査打ち切りのフリをしたのは強姦された荒木さんへの配慮だそうで。
奥田の友人が口を閉ざしたのは、荒木さんへの強姦は奥田の単独犯行ではなかったからだと思います。
警察に僕が犯人だなんてタレ込んだバカは一体誰なんでしょうか。全く腹が立ちます。
ちなみに僕は例の写真バラ巻きに関して厳重注意を受けました。それ以上のことは何もありません。
僕は本当に大丈夫でした。


1月30日(土) 晴れ

ここ二日間、事情聴取とかで学校に行ってませんでしたが今日は行き来ました。
荒木さんの逮捕で学校中騒然としてました。何処も事件の話題で持ちきりです。
こんな話が耳に入りました。「誰かが荒木さんを売った。」
それが誰のことなのか皆分かってます。その人は「警察に訴える。」と仲間内で公言してたそうです。
主語も言わずに。皆をびっくりさせたかったんでしょうか。「虫を訴える。」とは言ってなかった。
その誰かさんにしてみれば「売った」なんてのはとんでもない誤解です。逆に助けようとしたんだから。
残念ながら、その人は誤解を解く事が出来ません。誤解を解く機会すら与えられてません。
・・・・・・・・渡部さんは、いじめられてました。彼女が何か言っても、誰も聞かない。
友人を売ったクズ。裏切り者。ゴミ女。様々な陰口が囁かれてます。渡部さんに聞こえるように。
渡部さんは必死に言い訳してました。僕の所にも来ましたが、僕は無視しました。みんなも無視してました。
僕はボソっと呟きました。「警察に持ち込まなきゃ逮捕されずに済んだのに。」
彼女は何も言わなくなりました。席に座り、黙ってうつむいたままでした。机に涙が落ちるのが見えました。
ずっと、泣いてました。


1月31日(日) 曇り

僕をいじめた人たち。奥田。荒木さん。渡部さん。
奥田は死にました。荒木さんは警察に捕まりました。そして、渡部さんはいじめられっ子になりました。
僕は咎められる様な事はしてません。みんな自業自得です。
いじめ、カッコワルイ。


- 第3章 背徳の咎 -  完

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